英語 (A xxx B) : 和訳(B → A) の 和訳 (A → B) への移行 - その4 (A, not to say B)
私が高校生時代に学校で学習した A, not to say B は次のような意味でした。
A, not to say B
Bとは言わないまでもA
It's very warm, not to say hot.
暑いとは言わないまでもとても暖かい。
独立不定詞(不定詞を使った慣用句)を扱ったページに、上記の例文と和訳を入れておいたところ、ある読者から 「AというよりはむしろB、AであるだけでなくB」 という意味では?というコメントと次のリンクを紹介していただきました。
⇒ "... not to say ..."の本当の意味は(その1 その2)
⇒ "... not to say ..."の本当の意味は(その3)
上記のリンクは、帝京大学のクリストファ・バーナード教授の英語で書かれた連載コラムですが、非常に参考になります。
バーナード教授の解説を簡単にまとめると次のようになります。
A not to say B は、いろいろな参考書や辞書に 「Bとは言わないまでもA」 という和訳が挙げられているが、それは正しくない。
「Bとは言わないまでもA」 という意味に相当する英語は次のような文である。
I will not say A, but B.
I will not go so far as to say A, but B.
go as[so] far as to V : Vまで[さえ]する
I will hesitate to say A, but B.
hesitate to V [ヘザテイト] : Vするのをためらう
A not to say B の本当の意味は次の2つである。
[1] A と B が、同系統の意味合いの語句の場合
A ≒ B (A と B は同系統の語句)
A < B (B は A より程度が高い)
A → 遠慮した控えめな意見
B → 本当に言いたいこと(本音)
[和訳] AというよりむしろBだ
[例] She is pretty, not to say beautiful.
[例] 彼女はかわいい、というよりむしろ美しい。
(遠慮して「かわいい」と言っておくが、本当は「美しい」と言いたい。)
[例] I was tired, not to say exhausted.
[例] exhausted [イグゾースティド] : 疲れ果てた、へとへとの、くたくたの
[例] 私は疲れました、というよりむしろもうへとへとです。
(私は疲れました。いや本当のところ、もう疲れ果ててへとへとです。)
[2] A と B が、違う系統の意味合いの語句の場合
A ≠ B (A と B は別系統の語句)
A → 想定内の期待通りの感想
B → 想定外の意外な感想
[和訳] AだけでなくBでもある
[例] The museum was educational, no to say fun.
[例] educational [エジュケイショナル] : 教育的な、ためになる
[例] その博物館はためになっただけでなく面白かった。
(その博物館は期待通り教育的でためになったが、それに加えて意外に面白かった。)
[例] The theme park was fun, not to say educational.
[例] theme park [シーム] : テーマパーク
[例] そのテーマパークは面白いだけでなくためにもなった。
(そのテーマパークは期待通り面白かったが、その上意外にも教育的でためになった。)
要するに、「本当に思っている考え=本音」や「想定外の意外な感想」 を付け加える時に not to say ~ を使う、という訳です。
では、日本の辞書を代表して、ジーニアス英和辞典の第4版と第5版の解説を転載します。
[第4版]
A(,) not to say B
(主に英) B (だ)とは言わないまでも A, A もしかすると B でさえ(ある) 《◆ A と B は文法的に対等なもの ; B は A より程度がはなはだしい内容の語句》 He is inconsiderate, not to say rude. 彼の態度は無礼だとは言わないが配慮に欠ける(いや無礼と言ってもいいくらいだ).
inconsiderate [インカンシダラト] : 思いやり[配慮]がない
rude [ルード] : 無礼な、失礼な、無作法な
先に太字で 「B (だ)とは言わないまでも A」 を挙げ、次に補足的に 「A もしかすると B でさえ(ある)」 を挙げています。
[第5版]
A(,) not to say B
A より B (だ)と言った方が良い : A だが、はっきり言えば B だ 《◆ (1) A と B は通例望ましくない内容の形容詞で、B は A より程度が高い. (2) B とはっきり言いたいが、まず A と言うことで表現を和らげる》 He is inconsiderate, not to say rude. 彼は思いやりがない.はっきり言えば失礼だ.
思い切って、 「B (だ)とは言わないまでも A」 を消しましたね。英断です。(^-^)
バーナード教授の1つ目の解説と同じです。
次に海外の英英辞典を見てみましょう。
[Cambridge Dictionary Online]
and possibly even:
もしかしたら(~)さえ
It would be unwise, not to say stupid, to leave your first job after only six months.
たった6か月で初めての職をやめるのは賢明ではないだろう、もしかしたら愚かでさえあるだろう。
unwise [アンワイズ] : = not wise 賢明でない、愚かな、無分別な
stupid [スチューパド] : 愚かな、バカな、ばかげた
[Oxford Advanced Leaner's Dictionary Online]
used to introduce a stronger way of describing something
何かを表現する程度がより強い方法を導入するために使われる
a difficult, not to say impossible, task
難しいというより不可能と言ってもよい仕事
[Longman Dictionary of Contemporary English Online]
especially British English used when adding a stronger description of something
特にイギリス英語で、何かの程度がより強い表現を付け加える時に使われる
The information is inadequate, not to say misleading.
その情報は不十分と言うよりはむしろ誤解を招きやすい。
その情報は不十分であるだけでなく誤解も招きやすい。
inadequate [イナダクワト] : 不十分な、不適切な
misleading [ミスリーディング] : 人を誤らせる、誤解を招きやすい。紛らわしい
CDO と OALDO の例文は、
unwise ≒ stupid
unwise < stupid
difficult ≒ impossible
difficult < impossible
で、間違いないでしょうが、LDCEO の例文はちょっとあいまいで、
inadequate < misleading
inadequate ≠ misleading
のどちらかよくわからないので、2種類和訳を付けておきました。
さて、結論です。
もうお分かりですね。
「B とは言わないまでも A」 という和訳はもはや過去の神話です。
次のように覚えておけばいいと思います。
A(,) not to say B
1. A ≒ B で A < B の場合
1. A というよりは(実は)むしろ B (とさえ言ってよい)
1. = rather than A, (actually) B = A, or maybe even B
2. A ≠ B
2. A だけでなく Bでもある
2. = not only A but also B
[暗誦例文]
1. It is very warm, not to say hot.
1. = It is very warm, (or) maybe (even) hot.
2. The lecture was educational, not to say very enjoyable..
2. = The lecture was not only educational but also very enjoyable.
2. lecture [レクチャ] : 講義
2. educational [エジュケイショナル] : 教育的な、ためになる、有益な
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1. とても暖かいというよりはむしろ暑いです。
1. とても暖かいです、というか、暑いくらいです。
2. その講義は教育的でためになっただけでなくとても楽しかった。
次回は、A, not to say B と同じような意味の A, if not B を扱います。
英語 (A xxx B) : 和訳(B → A) の 和訳 (A → B) への移行 - その1 (A as well as B)
英語 (A xxx B) : 和訳(B → A) の 和訳 (A → B) への移行 - その2 (A as well as B)
英語 (A xxx B) : 和訳(B → A) の 和訳 (A → B) への移行 - その3 (A, not to mention B)
次回-英語 (A xxx B) : 和訳(B → A) の 和訳 (A → B) への移行 - その5 (A, if not B)
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