to 不定詞 [to + V] の表す時 (中・上級者向け) -その8-to have Vpp [完了不定詞]
⇒ to 不定詞 [to + V] の用法-総合目次
前々々々々々々回から、全用法の to 不定詞 [to + V] の表す「時」を点検しています。
少し時間がかかりそうですが、復習のつもりで気長にお付き合いください。 (^-^)
to have Vpp[過去分詞] = 完了不定詞 は、下記のページで相当詳しく説明しました。
⇒ be thought[believed][said] to V 型の文型-その1
⇒ be thought[believed][said] to V 型の文型-その2
⇒ It seems that S + V と S seem(s) to V - その5
⇒ It seems that S + V と S seem(s) to V - その6
to have Vpp [完了不定詞] は、たいていの参考書や教科書には、次のように解説されています。
(例文として seem を使っている場合が多いですね。)
■ 述語動詞よりも前時を表す ■
He seems to be sick.
= It seems that he is sick.
彼は病気であるように思われる。
He seemed to be sick.
= It seemed that he was sick.
彼は病気であるように思われた。
He seems to have been sick.
= It seems that he was[has been] sick.
彼は病気だった[ずっと病気である]ように思われる。
He seemed to have been sick.
= It seemed that he had been sick.
彼は病気だった[ずっと病気である]ように思われた。
高校で使っている教材には、「述語動詞よりも前時を表す」 という簡単な解説と、上記のような例文が羅列されているだけのことが多いようです。
これら例文を使っていくら唾を飛ばして力説しても、理解できる生徒は全体の三分の一ぐらいで、残りの生徒は、分かったようなわからないような状態か、何度説明しても全く分からないか、のどちらかです。
上記の4つのリンク先のページでも、to have Vpp [完了不定詞] をかなり詳しく解説したつもりですが、ここで改めて再解説することにします。
もちろん、上記の例文だけでは足りないので、もう少し例文を付け足して説明します。
まず、seem の用法を復習しましょう。
⇒ 6. It seems that S + V と S seem(s) to V-その1 ~ その9
It seems that he is sick.
彼は病気であるように思われる[であるようだ]。
のように、意味のない it を主語にして、that 節 を従える用法と
He seems to be sick.
彼は病気であるように思われる[であるようだ]。
のように that 節 中の主語を繰り上げて、to V [to 不定詞] を従える用法の2つがあります。
It seems that S + V.
= S seem(s) to V.
SはVする[している]ように思われる。
「主語繰り上げ構文」については、下記のリンクを参考にしてください。
⇒ 主語繰り上げ構文と to V [to 不定詞]-序文
S seem(s) to V. の用法の場合は、to V の V には制限があります。
seem to V の V には、通例 状態動詞 が入ります。
動作動詞の場合は、「習慣的に繰り返される動作」 か 「進行中の動作」 か 「状態を表す受身」 に限られます。
It seems that he is sick.
= He seems to be sick.
彼は病気であるように思われる[であるようだ]。
(状態動詞)
It seems that he likes cats.
= He seems to like cats.
彼は猫が好きであるように思われる[であるようだ]。
(状態動詞)
It seems that he comes here every Sunday.
= He seems to come here every Sunday.
彼は毎週日曜日にここに来ているいるように思われる[来ているようだ]。
(習慣的に繰り返される動作動詞)
It seems that he is sleeping now.
= He seems to be sleeping now.
彼は今眠っているように思われる[眠っているようだ]。
(進行中の動作)
It seems that he is liked by everyone.
= He seems to be liked by everyone.
彼はみんなに好かれているように思われる[好かれているようだ]。
(状態を表す受身)
一回限りの動作動詞は、通例、使われません。
It seems that he will come here tomorrow. (○)
= He seems to come here tomorrow. (?)
彼は明日ここに来るように思われる[来るようです]。
(未来)
つまり、seem to V の to V は、通例、「同時志向」 で 「未来志向」 ではない、ということです。
(ただし、現実的には、一般の人々[= プロの物書きではなく普通の人々]が使っているので、この「未来志向」 の用法を容認する文法学者もいます。)
seem の用法は理解できましたか?
次に、上記の3つの例文の seem(s) を seemed に換えて、文全体を過去にスライドさせてみましょう。
S seem(s) to V. の場合は、seem(s) を seemed に換えるだけで文全体が過去にスライドします。
これは、日本語も同じなので、理解しやすいですね。
He seems to be sick.
彼は病気であるように思われる[であるようだ]。
(思われる時[現在]と同時 = 現在)
He seemed to be sick.
彼は病気であるように思われた[であるようだった]。
(思われた時[過去]と同時 = 過去)
He seems to like cats.
彼は猫が好きであるように思われる[であるようだ]。
(思われる時[現在]と同時 = 現在)
He seemed to like cats.
彼は猫が好きであるように思われた[であるようだった]。
(思われた時[過去]と同時 = 過去)
He seems to come here every Sunday.
彼は毎週日曜日にここに来ているいるように思われる[来ているようだ]。
(思われる時[現在]と同時 = 現在)
He seemed to come here every Sunday.
彼は毎週日曜日にここに来ているいるように思われた[来ているようだった]。
(思われた時[過去]と同時 = 過去)
一方、It seems that S + V. の場合は、seems を seemed[過去] に換えると、that S + V の V も、それに合わせて 「過去」 にしなければいけません。
これを 「時制の一致」 と呼びます。
⇒ 中学英語・ちょっと復習-時制の一致について(入門)
It seems that he is sick.
彼は病気であるように思われる[であるようだ]。
(思われる時[現在]と同時 = 現在)
It seemed that he was sick.
彼は病気であるように思われた[であるようだった]。
(思われた時[過去]と同時 = 過去)
It seems that he likes cats.
彼は猫が好きであるように思われる[であるようだ]。
(思われる時[現在]と同時 = 現在)
It seemed that he liked cats.
彼は猫が好きであるように思われた[であるようだった]。
(思われた時[過去]と同時 = 過去)
It seems that he comes here every Sunday.
彼は毎週日曜日にここに来ているいるように思われる[来ているようだ]。
(思われる時[現在]と同時 = 現在)
It seemed that he came here every Sunday.
彼は毎週日曜日にここに来ているいるように思われた[来ているようだった]。
(思われた時[過去]と同時 = 過去)
日本語は、「時制の一致」 を行わないので、この時点で、英語と日本語を混同して理解できなくなる生徒が出てきます。
It seemed that he was sick.
彼は病気
彼は病気であるように思われた[であるようだった]。 (○)
It seemed that he liked cats.
彼は猫が好き
彼は猫が好きであるように思われた[好きであるようだった]。 (○)
It seemed that he came here every Sunday.
彼は毎週日曜日にここに来て
彼は毎週日曜日にここに来ているように思われた[来ているようだった]。 (○)
最初は暗号解読風になってしまいますが、「時制の一致をキャンセルして = 元に戻して」 意味を取りましょう。
It seemed that he was sick.
(頭の中で「時制の一致」をキャンセル)
→ It seemed that he is sick.
彼は病気であるように思われた[であるだった]。
慣れたら、できるだけ日本語を介さないで、元の英語のまま意味が取れるように練習しましょう。
ここまでは理解できましたか?
では、「現在完了」 = 「現時点での完了」「現在までの継続」「現在までの経験」 を、 to V [to 不定詞] で表すにはどうすればよいのでしょうか?
ここで to have Vpp[過去分詞] = 完了不定詞 が登場します。
It seems that he has already gone home.
= He seems to have already gone home.
彼はもうすでに家に帰っ(てしまっ)たように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]での完了)
It seems that he has been sick since the end of last year.
= He seems to have been sick since the end of last year.
彼は去年の暮れからずっと病気をしているように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]までの継続)
It seems that he has visited Kyoto many times.
= He seems to have visited Kyoto many times.
彼は何度も京都を訪れたことがあるように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]までの経験)
御覧のように、to have Vpp [完了不定詞] の場合は、最初に書いた制約はなくなり、一回限りの動作動詞も使うことができるようになります。
次に、先ほどと同じように、上記の3つの例文の seem(s) を seemed に換えて、文全体を過去にスライドさせてみましょう。
S seem(s) to have Vpp. の場合は、seem(s) を seemed に換えるだけで文全体が過去にスライドします。
日本語と全く同じです。
He seems to have already gone home.
彼はもうすでに家に帰っ(てしまっ)たように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]での完了)
He seemed to have already gone home..
彼はもうすでに家に帰っ(てしまっ)たように思われた[ようだった]。
(過去に思われた時点での完了)
He seems to have been sick since the end of last year.
彼は去年の暮れからずっと病気をしているように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]までの継続)
He seemed to have been sick since the end of the year before.
彼は前年の暮れからずっと病気をしているように思われた[ようだった]。
(過去に思われた時点までの継続)
He seems to have visited Kyoto many times.
彼は何度も京都を訪れた>ことがあるように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]までの経験)
He seemed to have visited Kyoto many times.
彼は何度も京都を訪れたことがあるように思われた[ようだった]。
(過去に思われた時点までの経験)
一方、It seems that S + have Vpp. の場合は、seems を seemed[過去] に換えると、that S + have Vpp の have Vpp も、それに合わせて had Vpp に換えなければいけません [時制の一致]。
It seems that he has already gone home.
彼はもうすでに家に帰っ(てしまっ)たように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]での完了)
It seemed that he had already gone home.
彼はもうすでに家に帰っ(てしまっ)たように思われた[ようだった]。
(過去に思われた時点での完了)
It seems that he has been sick since the end of last year.
彼は去年の暮れからずっと病気をしているように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]までの継続)
It seemed that he had been sick since the end of the year before.
彼は前年の暮れからずっと病気をしているように思われた[ようだった]。
(過去に思われた時点までの継続)
It seems that he has visited Kyoto many times.
彼は何度も京都を訪れたことがあるように思われる[ようだ]。
(思われる時[現時点]までの経験)
It seemed that he had visited Kyoto many times.
彼は何度も京都を訪れたことがあるように思われた[ようだった]。
(過去に思われた時点までの経験)
日本語には、「時制の一致」 はないので、かなり練習を積まないとこういう英語はすっと口に出ません。
日本語を介さないで、英語のまま意味が取れる 「達人」 は別ですけど、入門・初級者は 「和訳」 ですら四苦八苦します。
最初は暗号解読風になってしまいますが、「時制の一致をキャンセルして = 元に戻して」 意味を取りましょう。
It seemed that he had already gone home.
(頭の中で時制の一致をキャンセル)
→ It seemed that he has already gone home.
彼はもうすでに家に帰っ(てしまっ)たように思われた[ようだった]。
慣れたら、できるだけ日本語を介さないで、元の英語のまま意味が取れるように練習しましょう。
では、「過去」 の意味を to V [to 不定詞] で表してみましょう。
「過去」 の意味を表す場合も、「現在完了」 の場合と同じく、to have Vpp[過去分詞] = 完了不定詞 を使います。
ここでさらに頭が混乱する生徒が出てきます。(~_~;)
to 不定詞 は、to V (単純不定詞) と to have Vpp (完了不定詞) の2つしかないので、「現在完了」 と 「過去」 の意味は to have Vpp が兼任で担当するのです。
to have Vpp が 「現在完了」 と 「過去」 のどちらの意味になるかは、文脈によります。
It seems that he went home an hour ago.
= He seems to have gone home an hour ago.
彼は1時間前に家に帰ったように思われる[帰ったようだ]。(過去)
It seems that he was sick last week.
= He seems to have been sick last week.
彼は先週病気だったように思われる[だったようだ]。(過去)
今度も、seem(s) を seemed に換えて、文全体を過去にスライドさせてみましょう。
S seems to have Vpp. の場合は、これまでと同じく seem(s) を seemed に換えても to have Vpp はそのままで、自動的に文全体が過去にスライドします。
He seems to have gone home an hour ago.
彼は1時間前に家に帰ったように思われる[帰ったようだ]。
(思われる時[現在]に対して過去)
He seemed to have gone home an hour before.
彼は1時間前に家に帰ったように思われた[帰ったようだった]。
(思われた時[過去]のさらに過去)
He seems to have been sick last week.
彼は先週病気だったように思われる[だったようだ]
(思われる時[現在]に対して過去)
He seemed to have been sick the week before.
彼は前の週病気だったように思われた[だったようだった]
(思われた時[過去]のさらに過去)
一方、It seems that S Ved. の場合は、seems を seemed に換えると、時制の一致のルールに従って、Ved を had Vpp に換えなければいけません。
It seems that he went home an hour ago.
彼は1時間前に家に帰ったように思われる[帰ったようだ]。
(思われる時[現在]に対して過去)
It seemed that he had gone home an hour before.
彼は1時間前に家に帰ったように思われた[帰ったようだった]。
(思われた時[過去]のさらに過去)
It seems that he was sick last week.
彼は先週病気だったように思われる[だったようだ]
(思われる時[現在]に対して過去)
It seemed that he had been sick the week before.
彼は前の週病気だったように思われた[だったようだった]
(思われた時[過去]のさらに過去)
ここで又、さらにさらに混乱する生徒が出てきます。
英語は、「過去のさらに過去」 = 「大過去」 専用の語形がないので、「過去完了 = had Vpp」 で代用するのです。
つまり、「現在完了 = have[has] Vpp」 も 「過去 = Ved」 も 「時制の一致」 をして過去にスライドさせると、同じ had Vpp = 過去完了 / 大過去 になってしまうのです。
紛らわしいですね。 (T_T)
この場合も、暗号解読風になってしまいますが、最初は 「時制の一致をキャンセル = 元に戻して」 意味を取りましょう。
It seemed that he had gone home an hour before.
(頭の中で 「時制の一致」 をキャンセル)
→ It seemed that he went home an hour before.
彼は一時間前に家に帰ったように思われた[帰ったようだ]。
慣れたら、できるだけ日本語を介さないで、元の英語のまま意味が取れるように練習しましょう。
最後に、入門・初級者が混乱する点をまとめておきます。
1. to have Vpp [完了不定詞] は、「現在完了」 と 「過去」 の二つの時を表すことができます。
[現在完了]
He seems to have already gone home.
= It seems that he has already gone home.
彼はもうすでに家に帰(ってしま)ったように思われる[ようだ]。
[過去]
He seems to have gone home an hour ago.
= It seems that he went home an hour ago.
彼は一時間前に家に帰ったように思われる[ようだ]。
2. to V と to have Vpp は、述語動詞の seem(s) が seemed に換えられても、自動的にそのまま過去にスライドします。
He seems to be sick.
彼は病気であるように思われる[ようだ]。
→ He seemed to be sick.
→ 彼は病気であるように思われた[ようだった]。
He seems to have been sick since the end of last year.
彼は去年の暮れからずっと病気をしているように思われる[ようだ]。
→ He seemed to have been sick since the end of the year before.
→ 彼は前年の暮れからずっと病気をしているように思われた[ようだった]。
He seems to have been sick last week.
彼は先週病気だったように思われる[ようだ]。
→ He seemed to have been sick the week before..
→ 彼は前の週病気だったように思われた[ようだった]。
3. It seems that S + V は、seems が seemed に換えられると、「時制の一致」 が行われます。
It seems that S + V(s).
→ It seemed that S + Ved.
It seems that S + have[has] Vpp.
→ It seemed that S + had Vpp.
It seems that S + Ved.
→ It seemed that S + had Vpp.
その際、have[has] Vpp (現在完了) も Ved (過去) も、「時制の一致」 が行われると、同じ had Vpp (過去完了 / 大過去) になるので注意しましょう。
It seems that he is sick.
彼は病気であるように思われる[ようだ]。
→ It seemed that he was sick.
→ 彼は病気であるように思われた[ようだった]。
It seems that he has already gone home.
彼はもうすでに家に帰(ってしま)ったように思われる[ようだ]。
→ It seemed that he had already gone home.
→ 彼はもうすでに家に帰(ってしま)ったように思われた[ようだった]。
It seems that he went home an hour ago.
彼は一時間前に家に帰ったように思われる[ようだ]。
→ It seemed that he had gone home an hour before.
→ 彼は一時間前に家に帰ったように思われた[ようだった]。
次回- to 不定詞 [to + V] の表す時 (中・上級者向け) -その9-to have Vpp [完了不定詞]
⇒ to 不定詞 [to + V] の用法-総合目次
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